できない理由より、やれる方法を考える。
「冷感素材でマスクを作れないだろうか」その話が持ち上がったのは2020年5月。新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態の只中だった。平松工業では、大手繊維商社が開発した冷感素材を使用したタオルやインナーキャップなどの商品の企画開発、OEM生産を手掛け、市場から好反応を得ていた。だが、マスクの生産は今までに経験がない。折しも世間では不織布マスクの不足が社会問題となり、これから迎える夏場のマスク使用は快適性の面で不安視されていた。冷感素材マスクはきっと売れる。夏商戦は本番直前。迷っている時間はない。「やったことはないし、時間もないけれど、やってみよう!」決めればそこからは早かった。
未経験領域は、一度経験すれば次への糧になる。
平松工業ではOEM生産で新しいチャレンジを続け、今までいくつもの「やったことがない」を実現し、肌着以外のノウハウと実績を積み上げてきた歴史がある。パターン作成、試作品製作、卸先の業態に合わせたパッケージング、協力工場への指示出しなど、未経験領域であっても今までのノウハウをもとに、確実に形にしていった。企画立ち上げから1ヵ月後。冷感マスクの第一便が海を渡り、7月上旬には店頭に並んだ。生産担当者の携帯電話にはドラッグストア、コンビニ、プロショップなどさまざまな業種から万単位の追加注文がひっきりなしに入り、計画数の200万枚をほぼ売り切る大成功を収めた。
流行や消費者ニーズの変化が一段と早くなっている現代。スピーディな商品化を可能にする企画実行力と確かな生産背景は平松工業の大きな武器である。